「あのひと」「このみち」CD録音終了
マキシシングルCD「あのひと」(詩:吉原幸子)の録音が終了した。カップリング曲は「このみち」(詩:金子みすヾ)。ボーナストラックとしてピアノ+オーボエ+チェロの演奏で「LOVE]。
14日は、カラオケ録り。ピアノ、オーボエ、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、パーカッションという、アコースティックサウンド。ピアノは、20年近く前からコンサートに参加してもらっていた熱田公紀さん、チェロはここ数年一緒の諸岡由美子さん。気持ちの入れ方、タイミングなどあるので、仮歌として、私も歌いながら録音がすすめられていった。私はライブミュージシャンなのでこの方法が良い!わいわいがやがや、9時間。演奏がよい方向にどんどん積み上げられ、みんながひとつになったという瞬間があり、無事カラオケのレコーディングが終了した。
いくら仮歌といっても、一曲歌い終わるごとに、スーッと体の中から魂とエネルギーが消えていくようで、最後のほうはぐったり。
翌日は、音楽も思い出したくない、練習もできないほど、体と頭が疲れきっていた。ありえないことに1キロ痩せていた。どんなことがあっても1キロも痩せられなかったのに・・・・・。
「あのひと」は約2年前のスイートベイジルのコンサートで発表した。それ以前から「良い詩だなー」とは思っていたが曲を付け歌うには、まだまだ自分自信が何かに到達していないと感じていた。
そして、3年半前に病気をして、自分が死を近くに感じたとき、作曲できる、歌える詩として再び出合ったのだ。
あのひとは 生きてゐました
あのひとは そこにゐました
ついきのふ ついきのふまで
そこにいて 笑ってゐました
から始まる「あのひと」は、吉原幸子さんが亡き母に捧げた詩集『花のもとにて春』のなかにある。
CD化するご挨拶も兼ねて、久しぶりに吉原さんのお宅に伺い、一人息子の純さんにお会いした。
純さんは「あのひと」を書いた吉原幸子さんの息子さんで、‘あのひと‘のお孫さん。何だか、感無量になり、
その夜は、かなり興奮していた。
私のコンサートにゲストで出ていただいたり、イベントでご一緒したこともあるのだが、吉原幸子さんは、存在 感のある方で、近寄りにくいオーラをたえず放っていらっしゃった方だった。「あのひと」は吉原さんの詩の中で もかなり珍しいタイプの詩かもしれない。
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歌入れは、17日。
実は、5月の半ばに義母が亡くなった。「あのひと」の詩は、何から何まですべて義母そのまま。今回のレコー ディングは義母のためにあったような・・・・。高知県四万十市でひとりで生活し、静かにこの世を去った義母 が、私は大好きだった。こんなに綺麗な人いるのかしら、と思うくらい結婚写真に写っていた22歳の義母は美 しく、それからも年齢の美しさを重ねたひとだった。
通夜、葬儀が終わった夕方、私は四万十川をながめながら、「あのひと」を小さな声で歌った。空を染める夕 焼けが何とも美しく、まるで義母の魂がそこにあるようだった。
レコーディングで、私は義母のことを思い出さないようにつとめた。泣いてしまったらどうしようもない!
「あの詩を歌って、よく泣かないですね」と言われることがある。歌っている本人が泣いてしまったらおしまいで しょう!と、いつも思っている。
ゆえに、出来上がった歌は、少し淡々とし過ぎているかなーとも反省しているのだが、とにかく歌入れも終了し た。
トラックダウンが終わったのは、次の朝4時。
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午後、今回のCD化に情熱いっぱいのプロデューサーの川村さんと、吉原幸子さんのお墓まいりに行った。
そのお墓には、吉原さんとお母様がふたりで眠られていた。パソコンで出来たばかりの「あのひと」を流して
聞いていただいた。このお墓には、お母様である‘あのひと‘と、それを書かれた娘さんの吉原さんがいらっ しゃる。そう考えただけで言葉にならない思いがわき上がってきた。
吉原幸子さん、素晴らしい詩をほんとうにどうもありがとうございました。
金子みすヾの詩「このみち」も、感動的な詩で、この作品は、なるたけ詩に思いを重ねて歌うように努力したの だが・・・・。さて、結果は・・・・。
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